2015.09.22 UP
【夫の暴力、一夫多妻…】アフガニスタンの過酷な恋愛環境で生きる女性たちの実情って?
恋も仕事もライフスタイルも、努力次第で思い通りの生き方ができる現代。それでも「何か物足りない」と感じてしまうことはありませんか?
世界には思うように生きられない人たちもたくさんいます。自分の人生を自らの意思で決定できること、自由に恋愛ができることは、実はとても贅沢なことかもしれません。
「生きることの素晴らしさ」や「愛の尊さ」に気づかせてくれそうな1冊をご紹介します。
主人公はアフガニスタンで暮らすふたりの女性
今回ご紹介する『千の輝く太陽』は、1960〜2000年代のアフガニスタンを舞台にした作品です。
アフガニスタンというと紛争や内戦のイメージが強いかもしれませんが、かつては自然美やバーミヤン遺跡を求めて多くの人々が訪れる景勝地だったそうです。ところが戦争や政権交代により、治安が悪化。
『千の輝く太陽』は、過酷な環境のなかを生き抜くマリアムとライラというふたりの女性の視点で、当時のアフガニスタンの様子や、女性に厳しい恋愛・結婚事情などが描かれています。
マリアムは、お金持ちの男性と貧しい女性の間に生まれた私生児で、女性だからという理由で異母兄弟とは全く異なる扱われ方をされて育ちます。
ある日、30歳以上も歳の離れた男性ラシードと望まぬ結婚をさせられるも子どもはできず、苛立つ夫からの暴力に耐える日々を過ごします。
一方ライラは家庭環境もよく、幼馴染のタリークというボーイフレンドもいるというある程度恵まれた環境だったものの、紛争により家族ともタリークとも離れ離れに。
ミサイル攻撃により瀕死状態となったライラを救ったのが、マリアムの夫ラシードです。ラシードは2人目の妻として若いライラに求婚。
ラシードへの愛はほぼゼロに等しいとは言え、正妻のマリアムはおもしろいはずがありません。
戦争、夫の暴力、でも結末は・・・
当時のアフガニスタンは男性が圧倒的に優位な社会だったことから、マリアムもライラも、そしてライラとの間に生まれた子どもにも、ラシードはことあるごことに暴力を振るいます。
母と子ほどの年齢差のあるマリアムとライラですが、ふたりとも身寄りのないこともあり、過酷な状況に耐えながら、次第に血のつながりのある親子以上の関係へと発展していきます。
ラシードと結婚しているライラですが、幼馴染みであるタリークのことは常に心のなかにあったようです。ある日、タリークがライラの元に現れて……。
そこからマリアムとラシードを巻き込む衝撃的な結末が待ち受けているのですが、こちらはぜひご自身の目でご確認ください。
人生で本当に大切なことって?
身寄りのないマリアムとライラが築いた「血の繋がらない家族愛」、長い年月を経てもお互い忘れることのなかったライラとタリークの「純愛」。
この小説を通してわたしが感じたのは、「愛」というのはどんな形であれ、生きる希望や心の糧になるのではないかということ。5年以上も前に手に取った本ですが、今でも深く心に残っている1冊です。
人を愛することの素晴らしさ、そして平和な社会で暮らせることへの感謝の気持ちを再認識させてくれると思います。
千の輝く太陽/カーレド・ホッセイニ・著、土屋政雄・訳、早川書房・刊
鈴木 香穂里
ライター/編集者/パティシエ/レシピクリエイター