2023.04.28 UP
繰り返す中耳炎や副鼻腔炎、気管支炎…それってPID(原発性免疫不全症)かも?
病気がちで、体調を崩しやすく 、中耳炎や気管支炎、副鼻腔炎、肺炎などをよく患い、頻繁に繰り返してつらい…ということはありませんか。
もしかしたらそれは単に病気がちで、体調を崩しやすいだけではなく、PID(原発性免疫不全症)という生まれつき免疫力の弱い病気かもしれません。
あまり知られていないPID(原発性免疫不全症)について、専門医である東京医科歯科大学大学院 小児地域成育医療学講座の金兼弘和教授にお話を伺いました。
免疫とは体を守る防御システム
免疫とは、体の中に入ってきた病原体やアレルゲンなど、自分の体を構成する細胞や物質とは異なる“異物”を見つけ出して排除する“防御システム”です。
いろいろな特徴をもった免疫細胞が協力しながら常に異物を取り除いているおかげで、私たちは感染症を防いでおり、かかったとしても治すことができます。
しかし、免疫力が低下するとさまざまな異物を排除できず、病気になりやすくなってしまうのです。
生まれつき免疫力が弱い希少疾患「PID(原発性免疫不全症)」
一般的には、気温の変化や環境の変化によって免疫が低下しやすくなると言われており、免疫が低下すると風邪や気管支炎などの感染症にかかりやすくなります。
しかし、季節に関係なく気管支炎や肺炎、中耳炎、副鼻腔炎を繰り返している場合、免疫のどこかに生まれつき障害のある病気「PID(原発性免疫不全症)」が隠れている可能性があります。
PIDによって発熱や咳がいつまでも続いたり、入院が必要になることもあり、重症なPIDでは感染症をこじらせて致死的な状態になることもあります。
PIDはまれな疾患であるため、大人になってもPIDと診断されず、感染によるさまざまな症状に苦しんでいる人がいます。
PIDの症状
鼻やのどは体外と接するのでウイルスや細菌の侵入を受けやすく、PIDは気管支炎・肺炎・中耳炎・副鼻腔炎など、鼻とのどに症状が出ます。
そのほか、下痢や発疹もPIDの症状です。
また、細菌やウイルスが直接侵入しにくい臓器や血液に症状が及ぶ場合もあり、発熱をともなう髄膜炎や発育不全、悪性腫瘍やアレルギー疾患が起こるケースもあります。
専門医に聞く、PIDを見逃さない方法
PIDについて、東京医科歯科大学大学院 小児地域成育医療学講座の金兼弘和教授に話をお聞きしました。
――どのくらいの人がPIDなのですか?
金兼先生:現在診断のついたPID患者数は2,500名を超えるものと推定されます。
PID患者は出生10,000人当たり1人の割合で生まれると報告されており、診断されていないPID患者さんがいると考えられています。
――PIDの診断がされないと、どのような問題があるのでしょうか。
金兼先生:未診断の患者さんは、感染症が悪化した時に生命の危険にさらされたり、難聴や気管支拡張症などの後遺症を残すこともあります。
また、適切な診療を受けられずに仕事や社会生活を十分に送ることができないケースもみられます。
――PIDかどうかを調べる方法はありますか?
出典:PID情報サイト「くりかえす気管支炎・肺炎・中耳炎ナビ」(武田薬品工業運営)
金兼先生:PIDの可能性をチェックする「PIDチェックシート」が、PID情報サイト「くりかえす気管支炎、肺炎、中耳炎ナビ」で公開されていますので、ぜひ確認してみてください。
10の徴候のうち2つ以上当てはまるものがある場合は、医療機関の受診を勧めています。
PIDでも大丈夫、適切な治療で普通の社会生活が送れると期待される
「もしPIDだったら、どうなるのだろう」「治療で改善するのだろうか」と疑問を抱く人もいるでしょう。
金兼先生によると、PIDに共通する治療法として以下の3つの治療が行われています。
・感染症に対する適切な抗菌薬の内服
・疾患に応じた抗菌薬の予防内服
・症状に応じた免疫抑制薬などの処方
また、体内で免疫グロブリンが少ししか作られない「低ガンマグロブリン血症」のために易感染性(いかんせんせい:病気に感染しやすい状態)を示す場合には、免疫グロブリン補充療法を行います。
多くの患者さんは抗菌薬の予防投与や免疫グロブリン補充療法を行うことによって通常の社会生活を送れると期待されているそうです。
PIDは確かに難病ではありますが、適切な治療で他の人と同じように生活できる見込みも十分あると思うと心強いですね。
自分や家族、友人で心当たりがあれば、ぜひチェックシートで確認し、医療機関に相談しましょう。
治療を受けることで、これまでよりずっと楽に、かつ安心して毎日を送れるようになるのではないでしょうか。