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2022.03.03 UP

自分への投資が40代からの未来に繋がる!ネスレ日本マーケッター直伝「キャリアの描き方」

食べるもの、取り入れた栄養が、私たちの生活を支えている――。ネスレ日本のマーケッターとして、医療機関・介護施設向け流動食のヒット商品「アイソカルサポート」ブランドの立ち上げなど実績を上げてきた野口ゆりさん。

海外勤務を経て、現在は主に、ヘルス&ビューティ領域の海外ブランドの日本導入を進めています。

「自分の心の声を聞いて決める」と、キャリアを切り拓いてきた野口さんに、大切にしている仕事観を聞きました。

 

【野口 ゆり(のぐち・ゆり)さんプロフィール】

ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー
マーケティング&メディカルアフェアーズ統括部 ヘルス&ビューティグループ グループマネジャー
大学卒業後、食品メーカーでの営業職を経験後、マーケティングを学びにハワイ大学に留学。
帰国後、化粧品・健康食品メーカーでのマーケティング職を経て、
2007年、ノバルティスニュートリション株式会社(ネスレ ヘルスサイエンスの前身)に入社。
医療機関・介護施設への営業、営業企画を経て、マーケティング部門の製品担当に。
2014年、ネスレオーストラリアへ赴任し、帰国後、管理職に昇格。産休・育休取得の後、2021年5月より現職。
管理栄養士資格保有。

 

マーケティングの学び直しのために、20代で留学を経験

食べることが好きで、子どもの頃は調理師になりたかったという野口さん。管理栄養士という仕事の存在を知り、大学で資格を取得。食品メーカーの営業職でキャリアをスタートさせました。

マーケティングの仕事に興味を持ったのは、営業で5年経験を経たタイミングでした。商品コンセプトや販売戦略という、商品全体の方針を考える仕事に挑戦したいと、キャリアチェンジを決意。

「管理栄養士の勉強をしてきた営業経験者というだけでは、マーケッターとして力不足」だと考え、27歳で学び直しを決めます。

 

「仕事を辞めて、ハワイ大学に留学することにしました。グローバルで活躍できるマーケッターとして食品メーカーで広く商品づくりに携わりたかったので、グローバルに通じるビジネスを学ぶならアメリカ、と漠然と考えていたんです。

せっかくなら暖かいところに行こうと絞っていったらハワイ大学があった(笑)。入学と同時に初めてハワイ・オアフ島に降り立ちました」(野口さん)

 

帰国後、化粧品や健康食品を扱うメーカーでサプリメント商品のマーケティングに携わり、着実にキャリアを積み上げていった野口さん。そこで、一つの転機が訪れます。

「ちょうどその頃、母が祖母の介護をしていて、嚥下障害(食べること、飲み込むことの障害のことで、上手く食べられない、飲み込めない状態)などで少しずつ弱っていく様子を一緒に見ていたんです。

高齢者にこそ、栄養で生活をより良くするサポートが必要なのでは。そう考え、医療・介護分野に関心を持ち、転職を決めました」(野口さん)

 

現場の声の丁寧なヒアリングがヒット商品につながった

現在の会社に入社後は、営業や営業企画業務を経て、2011年にマーケティング部門にジョイン。医療・介護現場の様々な課題に向き合う中で、植物由来の食物繊維“グアーガム分解物”を多く配合した流動食「アイソカルサポート」ブランドを立ち上げました。

流動食を必要とする高齢者は食物繊維が不足しがちであるなか、おなかの健康に着目した「アイソカルサポート」は、高齢者ご本人や、介護を担う方の負担を軽減。発売以降10年以上、現在でも売上好調のヒット商品になりました。

 

「ブランドの立ち上げにあたり、医療・介護現場にはどんな悩みがあるのだろうと医療従事者の方に話を聞きました。すると、多くの高齢者が排泄トラブルを抱えていることが分かりました。

おなかの悩みがあると、ご本人の不快感はもちろん、排泄ケアをする介護者のストレスも大きくなっていました」(野口さん)

 

そこで、介護を必要とする高齢者にとっての「食事」である流動食で何かできることはないかと、ヨーロッパで先行発売されていた植物由来の食物繊維“グアーガム分解物”配合の流動食に着目。価格競争が激しかった日本の流動食領域で、「医療・介護現場の課題を解決する」という付加価値にこだわり、2011年に流動食「アイソカルサポート」を発売しました。

「『アイソカルサポート』は他社品と比較して価格帯が高かったので、どのように顧客に提案したら良いかと、営業現場からは戸惑いの声もありました。そこで展開したのが『うんちプロモーション』でした。

商品を使っていただいたご高齢者の“うんち”の写真をお借りして、どれだけ“いいうんち”になっているかアウトカムを可視化するためにビジュアルで見せたんです」(野口さん)

当初は営業担当から「食品メーカーなのに、商談でうんちの写真を見せるのか!?」と驚かれたそうですが、圧倒的なビジュアルの説得力に、当初は戸惑いを見せていた営業担当も顧客と一緒に現場の悩みを解決していく戦略にやりがいを感じ、積極的に活動してくれるように。

医療・介護従事者への認知度、高い利用度につながっていったといいます。

 

栄養を通じて、女性の美しさと前向きな気持ちをサポートしたい

国内での実績を評価され、同じコンセプトの製品をオーストラリアに展開するべく、2014年には単身でネスレオーストラリア赴任へ。

「空気を読まずに意見を言い合う」活発な職場環境や、子育てと両立して働く女性管理職の多さ、時短やリモートワークなど柔軟な働き方――。

「こうやって働き続ければいいんだ」と様々なロールモデルに出会えたことが、今のキャリアにつながっていると話します。

「帰国後に管理職をオファーされたとき、すんなりと『やってみよう』と思えたのは、オーストラリアでのびのび働く女性管理職をたくさん見てきたからでしたね」(野口さん)

現在は、結婚、出産を経て、2021年5月に育休から復帰。新たに立ち上げたヘルス&ビューティグループにて、アメリカ売上No.1コラーゲンブランド「バイタルプロテインズ」や、植物由来の食物繊維「グアーガム分解物」配合の食物繊維パウダー「アイソカル ファイバー」など、様々な製品や新規プロジェクトを抱え、日々奮闘中だといいます。

やりたいことに向けて、着実にキャリアを重ねている野口さん。仕事を進める中で大切にしている価値観が3つあると話します。

一つは、『自分にちゃんと投資する』こと

ハワイ大学へは会社からの派遣などではなく退職して私費留学で行ったため、留学中は経済的に苦労した時期もありました。でも、いま自分に投資してスキルを磨くことで、自分の将来が変わっていくと考えていたんです。経験やスキルを磨くために投資は忘れない。それが40代、50代の未来に生きてくると思っています。

もう一つが、『自分の心の声を聞いて決める』こと。

この年齢ならこうすべき……と周囲のプレッシャーを感じてしまうことはあるかもしれませんが、空気は読まずにその時にやりたいことをやる。自分の人生は自分のものですので、後悔しないように、自分の心の声を聞いて決めるというのを心がけています。

最後の一つが、『チャンスが来たらとりあえず飛び込む』ことです。

自分には不相応なオファーではと不安に思うことがあっても、まずは挑戦してみて、できなかったら周りにアドバイスを求めて修正していけばいいのかなと思っています」(野口さん)

 

現在は、人々の健康サポートにつながる商品を手掛けていることもあり、「ヘルス&ビューティ事業を通じて、すべての女性の美しさと前向きな気持ちをサポートしたい」と話します。

「人は食べたものでできています。栄養面からキレイにつながり、自分を好きになれれば、自分の気持ちを大切に行動できるようになりますよね。栄養から、豊かな生活を作っていけたらいいなと思っています」(野口さん)

 

田中 瑠子

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