2021.12.14 UP
生理の経血量、あなたは多い?「過多月経」を見過ごさず婦人科を受診してみて!
定期的に来る生理。必要なものではありますが、普段通り動けず痛みもあるため多くの女性が「煩わしい」と感じています。
この生理の時の経血量、自分は「多い」のか「普通」なのか、それとも「少ない」のかを気にしたことはありますか。
誰かと比べることが難しい経血量ですが、「多い」場合は婦人科系以外の病気が潜んでいる恐れがあります。
今回は、「過多月経」について専門家の先生にインタビューしました。
無自覚な過多月経、多くは「自分は普通」だと思っている
経血量が異常に多い状態が「過多月経」です。
過多月経は、生理がある10代から40代までのあらゆる世代に見られる疾患で、約600万人の患者がいると言われます。
ところが経血量の多さに慣れてしまい、異常を見逃す女性が多いようです。
実際に、生理用品の使用前後の重量から1周期分の月経量を計測した調査では、参加者113名のうち11名(8.3%)が経血量140g以上の過多月経に分類されるにも関わらず、8名は「自分の経血量は普通」と認識していました。
参加者の中で最も経血量が多かった(327.6g)女性でさえも、自分の経血量は「普通」という認識だったのです。
過多月経の原因は血液疾患かも
過多月経というと、子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科系の病気を考えがちですが、婦人科系以外の病気が潜んでいる恐れもあります。
そのひとつが、血が止まりにくくなる「血液凝固異常症」で、女性特有の症状に過多月経があります。
血液凝固異常症には血友病や白血病などのほか、フォン・ヴィレブランド病という病気があり、過多月経の女性の13%がフォン・ヴィレブランド病だったという報告もあります。
フォン・ヴィレブランド病とは
フォン・ヴィレブランド病は、止血のために重要な役割を果たすフォン・ヴィレブランド因子がない、もしくは働きが弱いために血が止まりにくい病気です。
鼻血や過多月経など、普通に生活している人にも認められる症状が多いため、判断が難しいとされています。
2020年の時点で1,438人の患者がいますが、未診断患者は約1万人にのぼると考えられています。
過多月経セルフチェックシートで確認してみよう
「経血量が多いだけで、普通に生活できているし……」と思う人もいるかもしれません。
しかし、過多月経が続くと、本人が自覚できない鉄欠乏性貧血(以下、貧血)になる恐れがあります。急激な貧血は症状になって現れますが、徐々に進む貧血は症状に出にくく、自覚が難しいのです。
貧血になると、動機や息切れのほか、倦怠感や集中力の低下を招き、QOLが低下します。それだけでなく、心臓に負担がかかるため、心不全になるリスクも抱えてしまいます。
なかなか自覚しにくい過多月経ですが、経血量が多すぎないかを自分で診断できるチェックシートをご紹介します。
ひとつでも当てはまるなら、婦人科を受診し相談することをおすすめします。
産婦人科医の尾西先生に聞いてみた「過多月経のこと、教えてください!」
チェックリストに当てはまる項目があっても、「病院に行くのはハードルが高い」「本当にこんな症状で病院に行ってもいいの?」と思う人もいるでしょう。
そこで、産婦人科の医師として都内のクリニックに勤務している、尾西芳子先生に過多月経について質問してみました。
――過多月経を疑って婦人科を受診した場合、どのような検査を受けるのでしょうか。
「まずは月経についてのお話をお聞きし、その後超音波(エコー)検査で子宮や卵巣を見たり、採血をしたりし、貧血がないかなどを調べます」(尾西先生)
――「先月の生理は経血量が多かったけれど今月は少なかった」というように、バラツキがある場合も婦人科を受診するべきですか。
「はい、経血量に差がある場合でも多い月がある場合は一度受診したほうが良いでしょう」(尾西先生)
――過多月経だった場合、どのような治療が行われるのでしょうか。
「止血剤や、止血作用のある漢方薬の処方や、ホルモン剤の内服、子宮内にホルモン剤を放出するデバイス(IUS)を留置することで出血量を減少させる治療を行います。
それらの治療でも出血のコントロールができない場合は、血液疾患の有無を調べることもあります。
また、子宮筋腫をはじめとした病気が過多月経の原因となっている場合は、原因を取り除くために手術を行うこともあります」(尾西先生)
検査は問診とエコーと採血が基本なので、何も怖いことはありません。また、治療により出血量をコントロールできるため、生理期間もぐっと過ごしやすくなります。
毎日をもっと快適に過ごすためにも、チェックシートに当てはまる項目がある人は、怖がらずに婦人科を受診してみて。
毎月ある生理、ラクに過ごして憂鬱を吹き飛ばそう
経血量が多くひんぱんに生理用品の交換が必要になったり、服やシーツを汚してしまわないか常に心配をしたりしながら過ごすのは、とても大変でストレスがかかるもの。
婦人科を受診すれば漢方薬をはじめとした薬でも経血量を調整できます。
生理の日の心配事を減らし、もっとラクに過ごせるように、「過多月経かも」と思う人は、医師に相談してみましょう。
■産婦人科医 尾西芳子先生 プロフィール
山口大学医学部卒。妊娠・出産から、婦人科がんの手術、不妊治療と広く学び現在は都内クリニックに勤務。
「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と女性のすべての悩みに応えることのできる女性のかかりつけ医として活躍する傍ら、雑誌やTVなどでも医療情報を発信している。