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2020.12.11 UP

スポーツ界もジェンダー平等に!日本サッカー協会と日本女子プロサッカーリーグが「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」に署名

女性アスリートの活躍は目覚ましく、ニュースでも日夜目にします。

2021年9月には日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ(Women Empowerment League)」が開幕。女子プロサッカーのフィールドは少しずつ広がっています。

一方、競技団体の役員や指導者、審判員などはまだまだ女性が少なく、ジェンダー平等が進んでいるとはいえません

そんなスポーツ界全体の課題に向き合うべく、日本サッカー協会(JFA)と日本女子プロサッカーリーグ(WE リーグ)は、国連グローバル・コンパクトと UN Womenが共同で作成した「女性のエンパワーメント原則(Women’s Empowerment Principles、以下「WEPs」)」への参加を発表。

次世代を担う女性のリーダーシップ育成に向かって大きく前進した、会見の様子をご紹介します。

 

ジェンダー平等を促進するWEPsの7つの行動規範

WEPs とは、2010年3月8日に策定された、女性の活躍推進に積極的に取り組むための行動原則です。

具体的には、下記7つの原則が定められています。

原則 1

トップのリーダーシップによるジェンダー平等の促進

原則 2

機会の均等、インクルージョン、差別の撤廃

原則 3

健康、安全、暴力の撤廃

原則 4

教育と研修

原則 5

事業開発、サプライチェーン、マーケティング活動

原則 6

地域におけるリーダーシップと参画

原則 7

透明性、成果の測定、報告

 

これらが、企業が現行の慣習や基準、行動を調査し分析するための実践的な手引きとなっています。

WEPsに参加している企業や団体は世界で3,819、国内では266団体(2020年11月9日時点)。

JFAとWEリーグは国内のスポーツ競技団体としては初めての参加となり、日本スポーツ界のジェンダー平等の推進が期待されています。

 

21年秋に日本初の女子プロサッカーリーグが開幕。プロスポーツのすそ野を広げていく

©JFA/PR

サッカー界では、2021年9月から日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ(Women Empowerment League)」が始まります。

女子のプロスポーツを根付かせ、女性の社会進出や活躍に貢献すべく誕生するWEリーグ。

1年後の開幕に向け、WEPsが掲げる原則の実現がサッカー界を大きく変革させていくと、JFAの田嶋幸三(たしま こうぞう)氏は話します。

「サッカー界はこれまで男性社会が色濃く、ジェンダー平等が進んできたとはいえません。

WEリーグの開幕に先立ち、JFAとWEリーグともにWEPsに参加することが、我々の女性活躍推進に取り組む原動力になると考えています。

今後は、JFAならびにWEリーグの職員、選手、指導者、審判員など、女子サッカーにかかわるすべての人が活躍できる組織風土の醸成に努めていきます。

サッカー界の取り組みから、日本のスポーツ競技団体にいい影響を与えていきたいです」(田嶋氏)

WEリーグには11チームの参入が決まっています。

参入チームは組織目標として以下2点を共通で掲げ、Jリーグにはない最低年俸も定めています。

①組織の意思決定者に女性が1名以上いること

②職員のうち50%以上が女性であること

 

さらに、女性指導者を対象とした「Associate-Pro(A-Pro)コーチ養成講習会」を開設し、WEリーグの指導者養成、世界のサッカー界における女性指導者の育成を目指しています。

WEリーグ初代チェア(代表理事)の岡島喜久子氏は、「WEリーグは一人ひとりが輝く社会の実現を掲げている。WEPsの行動原則には非常に共鳴するものがある」と話します。

 

戦略的な人材育成を進める「JFA女性リーダーシッププログラム」をスタート

WEPsの行動原則に基づき事業の第一弾として始まったのが、「JFA 女性リーダーシッププログラム」です。

サッカー界、スポーツ界のリーダーを志す女性を対象とした育成プログラムで、2020年10月31日から12名のサッカーやスポーツ組織にかかわる女性が参加しています。

JFA女子委員会委員長の今井純子氏は、「スポーツ界の女性活躍推進はまったく進んでいない」と現状に警鐘を鳴らします。

「スポーツ団体では、女性役員や評議員、理事の4割を女性にしようと5年前から目標を掲げてきましたが、達成できている組織はありません。

女性登用の動きが出ているものの、スキル・経験にマッチした女性の配置が進んでいない現状があるのです。

そこで、戦略的な人材育成強化の必要があると考え、WEリーグ設立意義の筆頭に『女性活躍社会のけん引』を掲げました。

多様な人材が組織運営することで組織は強くなると誰もが実感できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンを当たり前に広げることが必要だと考えています」(今井氏)

今回の「JFA 女性リーダーシッププログラム」では、社会をけん引する女性指導者、経営人材を育成することを大目的に、すでにそのポジションに近いところにいる方を対象にプログラムを進めています。

 

プログラムではまず、ジェンダー平等に関する課題が起こるメカニズムの認識を進めます。最終的には、組織内で対極的な判断も自信を持ってできるような経営リテラシーを身につけることをゴールとしています。

「集合研修と並行して、個人の課題に乗るメンター制度を設けるほか、女性同士のネットワーク構築によって、共通の組織の悩みを話せるなど、さまざまな副次的効果があると考えています」(今井氏)

 

女性アスリート活躍の場が広がる未来へ!

女性の意思決定者育成に向けたJFA、WEリーグの挑戦は、まさに社会全体が目指す先と共通しています。

WEPsの取り組みと、来年秋のWEリーグ開幕により、女性アスリートや女性の経営人材が当たり前に活躍できる社会をどこまで実現できるのか。

スポーツ界のみならず、社会全体への影響に期待を感じる会見でした。

 

文:田中瑠子

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