2016.09.12 UP
恋に効く!神さまの物語 9月12日~16日
日本で最も古い歴史書「古事記」には、イザナギとイザナミの神さまは鶺鴒(せきれい)が愛し合う姿を見て、めでたく結ばれ、多くの神さまをお生みになったという神話があります。神さまに恋の手ほどきをしたことから鶺鴒は、「恋教え鳥」と呼ばれるようになりました。
第四十三候「草露白し(くさのつゆしろし)」の9月7日~11日に続き、9月12日~16日は「鶺鴒鳴く(せきれいなく)」の時季。神さまを見習って、鶺鴒に恋の手ほどきをお願いしましょうか。
今回はイザナギとイザナミの神話、恋に効く神社をご紹介します。神さまの恋は思った以上に激しく、ドラマティックですよ。神話を理解すると、神社参拝も100倍楽しくなります。
七十二候とは?
時間に追われて生きることに疲れたら、ひと休みしませんか? 流れゆく季節の「気配」や「きざし」を感じて、自然とつながりましょう。自然はすべての人に贈られた「宝物」。季節を感じる暮らしは、あなたの心を癒し、元気にしてくれるでしょう。
季節は「春夏秋冬」の4つだけではありません。日本には旧暦で72もの豊かな季節があります。およそ15日ごとに「立夏(りっか)」「小満(しょうまん)」と、季節の名前がつけられた「二十四節気」。それをさらに5日ごとに区切ったのが「七十二候」です。
「蛙始めて鳴く(かえるはじめてなく)」「蚯蚓出ずる(みみずいずる)」……七十二候の呼び名は、まるでひと言で書かれた日記のよう。そこに込められた思いに耳を澄ませてみると、聴こえてくるさまざまな声がありますよ。
日本はどうやってできたの?
イザナギとイザナミは日本神話の中でいちばん最初に登場する夫婦の神さま。天と地の区別もなく、すべてが混沌としていた闇から物語は始まります。
清らかなエネルギーは天へ、重いエネルギーは地へ。天界は高天原(たかまのはら・たかまがはら)といわれていました。最初に生まれた神様はシングル(ひとりがみ)でしたが、その後、男女対の神さまが5組誕生。その最後に生まれたのが、イザナギとイザナミの神さまです。
イザナギとイザナミは天津(あまつ)神から、「大地を整えなさい!」という命を受けて、神さまの力を宿した天沼矛(あめのぬぼこ)を授かりました。イザナギとイザナミは天と地の間にある天浮橋(あめのうきはし)に立ち、天沼矛で海面をコロコロとかき鳴らしたところ、その矛の先からしたたりおちた海水で、おのごろ島という島が誕生。ふたりの神さまはおのごろ島に、結婚するための大きな御殿を構えました。
さて、新居は整ったものの、どうやって結ばれたらいいのか、神さまも悩んでしまったのです。そこへ鶺鴒があらわれて、鳥の恋の手ほどきを受け、イザナギとイザナミは愛し合い、たくさんの神々を生みました。イザナギは天空の父神、イザナミは黄泉の国を司る大地の母神といわれています。
愛し合ったふたりの未来
多くの神々を生んだふたりは、まさに幸せの絶頂。ところが最後に、ヒノカグツチノカミという火の神さまを生む際、妻であるイザナミは大やけどをして亡くなってしまうのです。イザナギの悲しみぶりといったら、すごいものがありますよ。泣いて泣いて泣いて、泣き疲れて、とうとう我が子をばっさりと切ってしまったのです。
時が流れても悲しみが癒えずにいたイザナギは、イザナミに会いたい一心で黄泉の国へ行きますが、「決して、私の姿を見てはなりません」というイザナミとの約束を破り、変り果てた妻の姿を見てしまうのです。あまりのショックで逃げるイザナギを「見~た~な~」と怒って追いかけるイザナミ。これがふたりの永遠の別れとなりました。
イザナギとイザナミのご利益
日本初の夫婦は「縁結び」「夫婦和合」のご利益を与えてくれます。ですが神話を読み解いてみると、さまざまなご利益が浮かびませんか? 混沌として、不安定だった日本の大地を整えたイザナギとイザナミは、あいまいな状況を整えてくれるでしょう。
好きな相手の気持ちがつかめない。始まりそうで始まらない不透明な状況に心がモヤモヤ。最近、自分の気持ちがよくわからない。そんな皆さんはぜひ、イザナギとイザナミを祀っている神社へ。状況を整理して、新たな関係、新たな自分を生み出す力を授けていただきましょう。
また多くの神さまを生んだイザナギとイザナミは、「子授け」「安産」の神さまでもあります。さらに、黄泉の国へと旅立ったイザナミは死と再生を司る女神とも呼ばれています。死や別れによって愛する人を失った悲しみを癒し、よみがえりの力を与えてくれるに違いありません。
天と地、男と女を結ぶ聖地
隅田川のそばにある東京の今戸神社は有名ですね。あっちを向いてもこっちを向いても、招き猫。イザナギとイザナミをご祭神とする注目のパワースポットです。
私がいちばんおすすめしたいのは、京都の天橋立です。天橋立はイザナギとイザナミが立った天浮橋(あめのうきはし)、天と地の間にあったとされる場所。神話の時代から続く聖地です。波音に包まれて、海に現れた真っ白な砂州(さす)を歩くひとときは、夢のよう。
天橋立は男女を結ぶご利益があるとか。この秋、鶺鴒で愛を結んだイザナギとイザナミに、大いなる力を授けていただきましょう。
【参考】『幸せが授かる日本の神様事典 ~あなたを護り導く97柱の神々たち~』CR&LF研究所/毎日コミュニケーションズ、『神社のおへそ』神社本庁/扶桑社
三浦奈々依(みうらななえ)
神社仏閣ライター・フリーアナウンサー・カラーセラピスト