恋愛

2013.09.20 UP

人魚姫という物語【前編】 ~一途な女性は幸せにはなれない?~


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おとぎ話に出てくるお姫様の中で、もっとも不幸なのは、おそらく人魚姫なのではないでしょうか。

 

嵐の中、海でおぼれている王子様を必死で助けてあげて、その彼を好きになった。

声を失っただけでなく、歩くたび足がナイフで突かれるかのような激痛をかかえてまで、彼女は一目ぼれした相手に会いに行った。

 

人魚姫の物語はバッドエンド

恋が叶わなかった人魚姫は、本来泡になるはずでしたが、最後は神様に救われて天国へ行きました。

……と、童話にはとってつけたように、ハッピーエンドを思わせる展開が書かれていますが、泡になるのも天国にいくのも、個人的にはそんなに違いはないような気がします。

ですから、明らかに人魚姫の物語はバッドエンドです。

 

報われない片思い

王子様は最後まで、人魚姫が自分の命を救った恩人だということは分からなかった。

きっと、人魚姫が失踪したあとも、「せっかく可愛い妹みたいな子ができたのに、いなくなってしまって残念だな」くらいの心持ちでしかなかったのでしょう。そう思うと、いたたまれないですが、現代ではよくある図。報われない片思いです。

 

さて、この物語で、悪いのは誰でしょう?

誰も悪くない。この物語のポイントはここなのです。

「王子、てめえ人魚姫を好きになってやれ!」と言ったところで、本人にその気が無いのに無理ってものでしょう。

 

だから誰も攻められない。そこが切ない。

 

でもあえていうなら、人魚姫はおろか過ぎました。恋に夢中になって、自分にとっては安心で快適な世界から飛び出した。そこがどんな不幸な世界なのかも、知らずに。

 

でも、女性ならば誰しも、人魚姫のことはバカにはできないのでしょうか。

彼に夢中になって何も顧みずに彼のもとへ向かった、そんな経験はありませんか?

 

人魚姫は、「彼の近くにいられるなら、声などいらない」きっとそう思っていたのでしょう。

でも、結果的に、近くでほかの女とイチャイチャする姿を見せつけられた人魚姫。

それでも彼女は幸せだったのでしょうか?

 

もし不幸だったなら、お姉さんたちが最後に助けに来てくれたのに、海へ戻らなかったのでしょうか?

 

恋の味

それは、すでに「恋の味を知ってしまったから」でしょう。

 

彼にはほかに女がいて苦しい、でも彼に優しくされたらうれしい、

ここにいたら傷つく、でも好きだから離れたくない、もう退屈な海の中には戻れない……。

そう、戻りたくても、戻れないのです。心に、彼の記憶がある限り。

 

おそらく人魚姫はそうやって悩み続け、心がキュンキュンしたり、ドキドキしたり、ギューッと締め付けられたりするその変化に、とても疲れてしまったとき、自ら消えようとしたのでしょう。あらゆる悩みから解放されたくて。

 

人魚姫は、一途な女性の象徴としてのポジションを確立していますが、本当のところは、自分のブレる心に疲れてしまって、とうとう最後は逃げてしまった。不幸な女性をつかまえて、自殺志願者だったんだ! とまでは言いませんが、本来そこまで崇拝されて天国にいくような偉人でもないように思えます。

 

この物語は、一途な女性が必ずしも幸せになれるわけではないということを教えてくれています。でも私はそれ以上に、人魚姫は、私たちにもっと深い恋愛の極意を教えてくれているような気がするのです。

それについては後編の、『人魚姫という物語【後編】~彼女が恋愛勝者になれなかった理由~』 で話していきたいと思います。

 

Photo By nbclover

メルヘン 可憐子

メルヘン可憐子

(コラムニスト/エッセイスト)

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