ライフスタイル

2013.08.21 UP

【第2回】幸せになりなさい。~ダメになってゆく方法~


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オイシイ思いも、しょっぱい思いも、いろいろしてきた年頃になってわかることと言えば、人生は山あり谷ありだということではないかと思う。

 

山があって谷があるということは、登った山はいずれ降りなければいけないということだ。誰であってもずっとトップに君臨しつづけることは不可能であると、歴史も証明している。

 

ダメになっていくにも、方法がある。

 

苦しみから逃れようとジタバタしない。これが最善の方法だ。でもこの方法を採れる人は極めて少ない。誰だって、ダメになっていくじぶんを認識したら、ふたたび浮上するべく悪あがきをする。

 

たとえば経営難に陥った会社の社長は、どうにか再浮上すべく借金をする。当座の支払いに困って借金をすることも当然あるものの、「***万円あれば新規事業をおこして、新しいスタッフを雇用して会社を立て直すことができる」と踏んで、借金をすることもあるそうだ。

でも、これで「浮上」する会社は少ない。帝国データバンクの倒産情報を見ると、びっくりするくらいの負債額が並んでいるけれど、負債額の「カラクリ」のひとつは、こういうことだと言う専門家もいる。

 

人は落ちるところまで落ないと「よし、次があるから、もう1回がんばろう」と思えない。つまり100%ダメになったときは苦痛が少なく(未来に希望を抱くことができるから)、ダメになる過程がもっともしんどくてつらくて、孤独を感じるときである。

 

2006年。六本木にバーをオープンさせた女性がいる。30歳でオープンさせた。その2年後、リーマンショックが日本を襲い、小さなバーはあっと言う間に客足が途絶えた。

 

それでも、預貯金がまだあったので、彼女は貯金を切り崩してお店の家賃を支払い、酒やウインナーやピスタチオなどを仕入れ、3人のアルバイトスタッフにお給料を支払い続けた。

 

先にも述べたように、経営とは不思議なもので、一度赤字になると、赤字が膨らみ続けることはあっても、再度黒字に転じることは、ほとんどない。

 

こういうことは後で知ることになる経営の裏情報のようなもので、その当時彼女はいつか黒字になると希望を持ち、銀行のATMの前でメソメソ泣き、スタッフや数少ないお客さんや、お金を貸してくれそうな人の前では気丈にふるまい続けた。

 

でも、結局雨は降るもので、2009年の12月にお店は倒産する。膨らみ続けた借金は2,000万円にのぼり、彼女は破産を余儀なくされた。

 

あれから4年経った今、彼女は元気だ。

 

彼女は言う。「ダメになる途中がいちばんしんどいよね。でも底の底まで落ちないと、神様って助けてくれないのね」。

 

現在、彼女はプロ野球選手の奥さんとして、2人の子どもたちと横浜の青葉台のほうで幸せに暮らしている。

 

誰しもダメになってゆくじぶんを見つめることはつらい。

 

でも果てしなく続くかのように思える「どん底に向かう過程」を、この目でこの耳でこの心で嫌というほど感じないと、幸せになれないのかもしれない。

 

幸せになりなさい。

 

 

画像JLStricklin

ひとみ しょう

ひとみしょう

(小説家/作詞家/ANGIEシニアライター)

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