ハピネス

2013.08.20 UP

【第1回】幸せになりなさい。~夏の終わりの分岐点~


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夏の終わりのある朝、窓を開けると急に空が高くなったように感じる。台風がひととおり日本列島をドタバタと通り過ぎてしまえば、忘れていた誰かから手紙が届いたときのように、空はなんの前ぶれもなく高くなり、ぼくたちはひとりの季節がやってきたことを目で肌でにおいで感じる。

 

そう、夏は終わったのだ。無神経な残暑の日差しはまだ肌を焦がすものの、空は高くなり、砂浜で遊んでいた人たちはじぶんの生活へと帰ってゆき、夏は終わってしまったのだ。

 

夏の終わりは、やり残してきたことを思い出させる。

 

夜風が冷たくなったことがわけもなく淋しくて「今日会えないのなら、もう別れようよ」と彼に言って幕切れを迎えた昔の恋を思い起こさせる。

 

18のとき、あの男子に恋していなければ、私は浪人生活を送ってでも第1志望の大学に入って、今とはまったくちがう人生を送っていたかもしれないと思う。

 

30のとき付き合っていたあの彼の前でもっと素直に振舞うことができたならば、今ごろは子どもが2人くらいいて、あざみ野のほうで平凡ながら幸せな生活を送っているのではないかと思う。

 

でもあなたは今35歳だ。時は戻りはしないから、来年は36になり、再来年は37になる。

 

夏の終わりは分岐点だ。

 

あの時もしもこうしていれば……。恋愛においても、仕事においても、もっと昔の学校生活においても、「もしも」を想い、小さくため息をつく季節。

 

晩夏の無情なまでに高い青空は、ぼくたちにこういうことを思い起こさせる天才なのかもしれない。

 

サマー・ジャンクション。

 

歴史に「もしも」はないと、世間では言われる。

 

織田信長が「もしも」本能寺に行かなければ……という発想それじたいは、楽しいけれど、そこに意味はない。歴史にもしもはないのだから。

 

あなたのサマー・ジャンクション。

 

人の歴史にも「もしも」はないのかもしれない。

 

でも過去に「もしも」はないとしても、未来に「もしも」はある。

 

「もしも」あなたに幸せになる選択肢を選び続けることができるならば、あなたの未来の「もしも」は現実のものになる。

 

幸せになりなさい。

 

高い空を見上げて、いっぱい泣きなさい。

 

涼しい夜風に吹かれて、季節を知りなさい。

 

なによりも温かな思い出を抱きしめなさい。

 

続きます。

 

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ひとみ しょう

ひとみしょう

(小説家/作詞家/ANGIEシニアライター)

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