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2013.10.12 UP

迷いの森の憂鬱④おとぎの国にとじこめられたお姫さま【後編】


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目指すのは、今よりもうちょっと素敵な自分?

虚言癖のある人の話を聞くと、たいていは、本当に些細なことでウソをついているのです。

たとえば二股している人がいて、「彼女は君だけだよ」とか言っているようなウソに比べると、本当にかわいいものなのです。

「本当は国立大学にも受かったんだけどね、親に反対されたから今の大学にきたの」
「へ~すごい!」

「本当は○×商社にも内定もらったんだけど、今の仕事のほうが面白そうだったからこっちにきたんだ」
「へ~○×商社に内定もらえるなんてすごいじゃん!」

そんな風に、『自分の本当の能力は今よりも上なんだ』と自分にも周りにも思い込ませるために、そのようなウソをつく。

どちらにせよ現実として彼は国立大学には行っていないし、○×商社にも入っていないのだから、「別にどっちでもよくない?」と私などは思ってしまうのですが、

彼らにとってはきっと、どうでもいいことではないのでしょう。「本当の俺はもっとすごいんだよ!!」と誇示するために、ウソをついてしまうのです。

 

の「自分の能力を必要以上に見せたがる」パターンは男性に多いのですが、女性にもまた、同じような性質があります。

些細なウソならかわいいものですが、一度だけ、「この子はこの先どうなっちゃうのだろう?」と思ってしまった女の子がいます。

あれはまだ学生の頃でした。

「家が厳しくて、門限があるの」
「私のお母さん小さいころに死んじゃったから、お父さんが過保護で」
「あそこに男の子いるでしょ? 私、あの人に付きまとわれてて、この間アクセサリー渡されちゃったの」
「でも守ってくれる彼氏がいるから、私はなんとか生きていけてるの」

最初は「え~この子別にかわいくないし、そんなモテるわけないと思うんだけど……まあ世の中いろいろな人がいるもんね」と信じでいた私。
彼女の家庭環境も恵まれていないようだったので、同情もしていたのだと思います。

しかし、すべてがウソだということが分かった。
何もこちらがウソを暴こうとしなくても、彼女はウソであることを隠そうとしていないから、普通に話しててポロポロと化けの皮がはがれていくのです。

 

その時はさすがに私も若かったから「もう信じられない!」とかいって、距離をおいたものですが、でも今なら少しだけわかる。

彼女は彼女の中に、もう一人の彼女をつくっていたのでしょう。

平凡なサラリーマン家庭の彼女。顔も頭も、贔屓目に見ても中の下。
でもそれでも、彼女はお姫さまになりたかったのでしょう。

最初は些細なウソだったのかもしれません。
でも、「へ~○○ちゃんすごい!」と言われたときに、彼女の中で、もう一人の『私』がスポットライトを浴びるにふさわしい人物になれることに気付いたのでしょう。。

そうだ、お母さんが死んでしまったことにしよう、しつこい男につきまとわれていることにしよう。その人から守ってくれる素敵な彼氏がいることにしよう……。


そんな話を周りに話しているうちに、本当に自分がその人間になれたように錯覚する。

するともう、「本当の自分」に戻ることができなくなってしまうのです。だって、現実の自分は妄想していた自分に比べて、がっかりするほどイケていないから。

おとぎ話の世界に閉じ込められて、現実の世界には戻ってこれなくなってしまいます。

 

それでもみなさん、もう一人の自分を作りたいと思いますか?

私は、ちょっとイヤですね。

 

Photo By jagged-eye

 

メルヘン 可憐子

メルヘン可憐子

(コラムニスト/エッセイスト)

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