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2014.04.30 UP

ZARAのマーケティング作戦の裏側~スペインの消費税事情~


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 今月の日本の消費税増税に合わせて、今回は比較対象として参考になればと、スペインの消費税まわりの状況についてお伝えしようと思います。

 

スペインの消費税:付加価値税(IVA)

ここスペインで日本の消費税に相当するものは付加価値税というもので通常IVA(イーバ)と呼ばれています。

直近の増税は2012年の9月に行われ、現在は4%(最低税率)、10%(軽減税率)、21%(通常税率)の三段階に設定されています。

 

それまでは、4%(最低税率)、8%(軽減税率)、18%(通常税率)の三段階で、最低税率だけは上がりませんでした。

21%とだけ聞くとかなり高い印象だと思いますが、逆に4%の最低税率は日本の8%の半分なので、こちらはかなり抑えられているといえます。

 

だからまず、生活に必要な品目の税率を4%に抑えていることは評価すべきだと思います。日本でも贅沢品に対しては税率を上げ、生活必需品に対しては軽減税率にするなど、検討してもよいのではないかと感じます。

 

三段階の税率のうちわけ

●4%(最低税率)のカテゴリーに含まれる品目は、野菜牛乳パン果物新聞(紙媒体のみ)などです。

 

●10%(軽減税率)のカテゴリーに含まれる品目は、食料品の一部医療製品交通手段ホテルなどの宿泊施設の大部分、娯楽・文化関係などです。

 

●21%(通常税率)は上記以外となるのですが、具体的に何が含まれるかというと、光熱費(電力やガスなど)通信費(電話)洋服化粧品アルコール飲料タバコ家具などです。

 

基本的な情報はこのような感じですが、以下に3つ問題だと感じられる点を挙げようと思います。

 

スペインの消費税まわりの問題点

ひとつめの問題として、スペインの失業率が25%を超える状況下で消費税を上げることは、家計にかなりの打撃を与えることが挙げられます。

 

仕事を失ったとしても、生きていくためには消費を続けなければいけません。そこで消費税が上がると、失業者を支える家族やパートナーの出費も増します。

 

このタイミングで消費税を上げた現政権の判断は正しかったのかどうか、わたしは疑問に思います。実際に失業していたり、一時的に仕事を失っていた同世代の人びとを知ってますし、失業者を支えているパートナーや家族も知っています。

給料がまったく上がらない状態で消費税を上げられると、給与所得者の生活は厳しくなってしまいます。

また、失業者が多く、消費をポジティブにできる人が少ないということは、所得税を効率的に回収できる状況でもないと思うのです。

 

ふたつめに、品目によっては実は4%→4%、8%→10%、18%→21%という緩やかな増税率を適用されたものばかりではないということです。

 

いくつか目立ったものを挙げると、例えば、観賞用の花・植物美容院映画館などはもともと8%だった税率が21%になり、急激に13%も上がっているのです。

廃業になる美容院がこれからどんどん増えると言われていますし、ネット上の映画鑑賞(不法ダウンロード含む)にも追い打ちをかけられる映画館の経営はとても厳しい状況です。

 

花も「生活必需品」かと聞かれるとそうではありませんが、街を散歩するときそこに花屋があると、それだけで良い街だと思えてウキウキします。

パリでも同じようなことを感じますが、バルセロナでも花屋があちらこちらにあり、街歩きを楽しくしてくれる要素のひとつだと感じます。

 

何を「贅沢品」と定義するか、というこの線引きはなかなか難しいと感じます。個人的には「心の潤い」も、わたし自身の生活には不可欠だと思います。

 

最後に、消費税は消費者が支払う税ですが、まわりまわって中小企業のパフォーマンスにも影響を与えます。

 

コストパフォーマンスの良い外国の工場での大量生産体制が整っている大企業には、増税後も値上げしないという選択肢があります。しかし、国産で質で勝負しようとしている中小企業にはそんな余裕はありません。

 

例えば、ZARA(ザラ:スペイン語では「サラ」と呼ばれる)は日本でも若い人たちには有名だと思いますが、これはスペインのアパレルブランドです。

ZARAは日本では少し高めのブランドというポジション取りをしていますが、ここスペインではどこの街にもあるお手頃価格の国民的ブランドです。スペインでは「ZARAが洋服の着こなし方を教えてくれた」というほど、スペイン人のファッションセンスへの貢献が大きいようです。

 

このZARAを筆頭にいくつものアパレルブランド抱えるスペインのInditex(インディテックス)というグループ会社があります。

この会社はスペイン政府が18%から21%へ、3%消費税増税を決定した時に、まだ法律が適用される2ヶ月前の2012年7月の時点で、増税後も洋服の値段をあげないことを宣言しました。

 

Inditexのこの宣言は安い服が欲しいという消費者にとっては嬉しいことだと思いますし、さすが優秀な企業で消費者の心をつかむマーケティングに長けていると思います。しかし、中小のアパレルメーカーにはInditexのように収益における余裕はないので、値上げをせざるを得ません。

 

また、特にスペインのような不況下の消費者は、安いものを求める傾向も一層強いので、値上げした中小メーカーの服はますます販売が難しくなります。

 

去年、たまたまふらっと入ったバルセロナの小さな洋服屋さんで、女店長が、手作りの洋服を販売してきたそのお店を閉店することになった経緯について話してくださいました。きっと話す相手は誰でもよかったのだと思います。

 

「今は本当の服の良さが分からない若者が、流行だけで安くて質の悪いZARAとか着るから、難しいわね」と悲しそうな顔をしていたのを覚えています。

わたしも正直なところZARAで服を買うこともあるので、どう返答したらよいか分かりませんでしたが、今振り返ると閉店には増税の影響もあったのかもしれません。

 

消費者に対しては、何でも「安いから買う」という消費のしかたで本当にいいのか? という問いがあります。これはわたしも考えていきたいテーマです。

また、消費税率に関していえば、既存の大企業だけが勝ち残りやすい仕組みでよいのかどうか? という問いもあるのではないでしょうか。

 

Photo by Pinterest

Takako

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