2014.04.22 UP
ヴェールに包まれたオタク女子の「部屋」私を幸せにするアイテム
※川本史織『堕落部屋』(グラフィック社)2013年
床に炊飯器が置いてある。
キャスター付きのイスに、なぜかテレビが乗っている。
男根がインテリアの豪邸に住む主婦。
服に埋もれるアイドル……。
これらは、東京、大阪の都心に住む、アイドル、コスプレイヤー、漫画家、美術家、デザイナーなど、マニアック女子(オタク属性)50人の部屋とポートレートを紹介する『堕落部屋』という名の写真集に紹介されている、部屋の一部です。
私が初めて自分で購入した写真集が、こちらのフォトグラファーの川本史織さんが撮影された『堕落部屋』でした。
いつも心が荒んだ時に、この決して「美しいお部屋ですね」とは言えない写真集を広げ、オタク女子たちの部屋を見て、癒されています。
部屋に足の踏み場がない、なんてまだ序の口。
好きなものはジャンルを問わず、同じ場所に収納され、いつでも手の届く位置に管理されています。
それはある意味とても機能的ですらあり、華麗なヴェールで包まれている、見てはいけない女子の部屋を覗き見してしまったような、高揚感が得られるのです(笑)。
「断捨離」も流行ったし、きちんと整理整頓されている部屋の方が、頭も心もスッキリすることは知っています。
ですが、ひとつ原稿を書き上げるたびに机の周りは関連資料の山ができ、ふと気を抜いた時に、資料の雪崩が起きるような生活を続けていると「整理整頓って一体なに?」とやさぐれてしまうのも、また事実です。
本なんかは「絶対夜中に細胞分裂してるでしょ!?」と言いたくなるくらい増えるのが早く、部屋を侵食していきますし……。
やっとつかんだライターの夢。何とか一歩でも前へ進もうと、絶対に締め切りに遅れるまい! と必死に原稿をこなしていると、部屋の片付けは「やらなければならないことリスト」の最後尾になってしまいます。
ただ、だらしないだけではあるのですが……。
著者の川本史織さんはあとがきで、「人生一度は堕落(堕楽)するのもいいかもしれません。それは、何かを志すための通過儀礼として」とおっしゃっていました。
数々の堕落部屋を見てこられて、皆さんとても楽しく生活していらっしゃるように感じられたそうです。
「堕落」というより「堕楽」だと。
『堕落部屋』に登場していた総勢50人の女の子たちは、たぶん皆、夢を叶える途中にいるはずです。
ゲーム機器と珍味が同居していても、本棚に謎の液体が置かれていても、その先にあるものを必死で見ているのだと思いました。
「ありがとう、私も頑張ります。そしてお邪魔しました……」
Photo by e-hon-『堕落部屋』

さゆ
(フリーライター)