ライフスタイル

2013.09.06 UP

どこまで堕ちるか、女の人生!~絶望の先を見てみたくて~【第7話】


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恋は盲目。けれども、それに勝つ”何か”もきっとある。

その時期の彼は、彼女とケンカでもしたのでしょうか。

やたら私が頻繁に誘われるときがありました。

いつもより会える頻度が短くて、私はとてもうれしかったのです。

 

強がっていたのに、いつでもサヨナラを言う準備はできていたはずなのに、

もっと好きになってしまった。 割り切っていたはずなのに、優しくされると期待してしまう。

 

「この人、私のことわりと好きなんじゃなかろうか」ってカン違いをはじめる。

 

ためしに「ねえ、私のこと好き?」と聞いてみたら、好きだと答えてくれる。

てっきりかつてのトラウマが復活するかと思ったけど、好きな人にそのように言われるのは、意外とうれしいことだと分かりました。

だからでしょうか。関係あるのかないのか……。

私は――― 子どもを妊娠したのです。

 

結論からいうと、子どもは流れてしまいました。

 

しばらくは何もできませんでした。

彼とは関係なく、私は産みたかったから。

 

それが叶わなかったことがただ悲しくて、何もしていないと泣いてばかりだったから、なんとか気持ちを奮い立たせようと仕事をしていたのですが、それでも気づくと目から水が出ていたようで、仕事をしている時に、「あれ? なんで泣いてるの?」なんて言われてはじめて、涙がこぼれていたことにはっと気づくことも。

 

そんな私に、彼はなぐさめるでもなく、叱るでもなく、とんでもないことを言ってきたのです。

 

「俺と一緒に、スマホ向けのゲームつくる? 本業とは別にプロジェクト立ち上げようと思ってるんだけど、シナリオ書く人がいなくて」

 

は? ゲーム? 何いってるのこの人。胎児とはいえ、人ひとり死んでるのにゲーム??

 

まああなたは、もともとおろせって言ったもんね、仕方ないわ。病院にすらついてきてくれなかったしね。私への気持ちなんてその程度よね。知ってたわ。でも私にもプライドはあるの。もう潮時かしら。

 

子どもを産もうとしていたときは、「彼は関係ないの!」とか意地をはってたくせに、今更彼への恨みつらみが沸々と湧いてきて、ムカムカしている私の様子をちっとも気にかけることなく、彼は製作途中だというゲームのムービーを私に見せてきました。

 

―あれれ? なんかおもしろそうじゃん。

 

もともとゲームが好きで、それが転じてこの業界に入った私ですから、ゲームそのものは好き。

でも、面白くないものはダメ出しします。仮にもゲームレビュアーでもありますから。

 

でも彼の見せてきたそのサンプルは、ひいき目なしにしても、面白そうだった。その時思ったのです。

 

ああやっぱり、この人は男としてはどうしようもないけれど、とことん私の好きなとこを突いているんだな、と。

 

そしてこれを見て、こんな状況なのにもかかわらず心踊ってしまう私も、まだ母になるには早かったんだろうなと感じたのです。

 

だから私は、「つくる」と答えました。

そして、そう口にした瞬間、思い出したのです。

 

―そういえば私、数年前に初めてこの人に会ったとき、ゲーム作りたかったんだっけ。

 

こうして、私が彼に会ったときにやりたかったことが、1年経ってようやくできるようになったのです。

 

どん底の地獄にも、神様はいたのかもしれません。

 

Photo BY Prairiekittin

メルヘン 可憐子

メルヘン可憐子

(コラムニスト/エッセイスト)

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