ライフスタイル

2016.08.19 UP

服選びでストレス倍増…ファッションって何を表しているの?


現代人が抱える“ちょい病み依存”についての臨床心理士・山名裕子先生が教える連載、第2回も流行依存について取り上げたいと思っています。

皆さん、毎日の洋服選び、楽しんでいますか? 「ウキウキする」「何を着ようかなと考えている時間が好き」と言える方は、自分の気持ちに対してファッションを上手に使っている状態。

ですが、「服選びが憂鬱。いっそのこと制服があればいいのに」「服を決めるのに迷ってしまってストレスになっている」というのであれば、それはちょっと危険信号かもしれません。

 

ファッションの役割とは?

毎日のように身につける服。どんな方も何かしらの理由があってその服を選び、その服を身につけていると思います。単純に「安かったから」という方もいるかもしれませんが、例えば同じ価格の服であっても、赤い服と黒い服だと「こっちがいい」というように選んで購入したはずです。

学生時代にギャル系の派手だった子が、社会人になるにあたってギャルを卒業し、黒髪のOLファッションに鞍替えすることもあります。これは、学校という組織から会社という組織に変わったときに、そこのコミュニティで嫌われずになじもうという心理が働いています。

つまりファッションは一つのコミュニケーションでもあり、「こういう風に自分を見せたい」「キャラ立てしたい」という心を反映しています。このいわばセルフブランディングのようなことを、心理学では「自己呈示」と言います。洋服を購入する際、毎日の服選びの際に、こだわりが出てくるのはこの自己呈示によるものです。

『人は見た目が9割』という本が大ヒットしたように、第一印象は非常に大きいものです。第一印象はわずか数秒で決まると言われており、一度決定された判断は、よほど深くつき合わない限り覆すことはできません。ほんの一瞬の見た目の印象から、その人がどんな人であるかが判断され、決定づけられてしまいます。

そのため、ビジネスシーンであればデキる女性に見せたい、合コンでは女性らしさを出したいというように、ファッションや髪型など、話し方や仕草といった動作以外のところでも変化をつけていくのです。

このようにファッションは、上手に取り入れればコミュニケーションにおける一つの武器になりますが、「自分がどう見られたいか?」という心理を反映するもののため、一歩間違うと自分を苦しめる原因にもなり得ます。

 

武装としてのファッション

作家の志茂田景樹先生は、とてもカラフルなファッションでも有名です。パフォーマンスで行っている部分も大きいのでしょうが、「派手な色の服を着ると元気が出る」「アースカラーなど落ち着いた色の服を着るとリラックスする」など、服によって気持ちが変化する経験は誰もが持っていると思います。

例えば、大阪のおばちゃんはド派手ファッションが定番。髪の毛を紫色にしてカチコチのパーマをあて、ヒョウ柄のTシャツにペイズリー柄のパンツを穿くなどと独特のセンスをお持ちです。あれは一種の武装。ヒョウ柄を着ることでちょっと強い気持ちになるためのものだと思います。バブル時代のボディコンファッションや、ヤマンバギャルのメイクなども同じジャンルに入るでしょう。

これには「ジェームズ・ランゲ説」が関わっています。「人は悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ」という有名な言葉がありますが、身体変化が情動に変化を与えるということを表しています。

泣いていたら余計悲しくなるし、ちょっとつらいときでも笑顔をつくることで少し気持ちが高まるということがあるかと思いますが、ファッションも同じ。ちょっと落ち込んでいる日に、敢えて「テンションをあげるぞ!」と派手な色の服を着ることがあるでしょう。

また、流行のものを着るとちょっと自信がつくという人もいるでしょうし、芸能人がよく着ている人気のブランドを取り入れることでセレブっぽい気持ちになれる人もいると思います。おしゃれだから流行の服を着るのではなく、流行の服を着るからおしゃれな人になれるというロジックです。

このように自分の気持ちを奮い立たせるためにファッションを取り入れるのであればよいのですが、行き過ぎるのは考えものです。

 

「人からどう見られたいか」を気にするあまり・・・

Aさんは現在、専業主婦で2人の子どものお母さん。PLSTやGAPなどの服を着て、ラルフローレンのトートバッグを持つようなキレイめのカジュアルファッションです。けれどもほんの10年前まではこういうタイプではなかったのです。

学生時代は裏原系の個性的な格好をしていました。ちょうどゴスロリも流行っていたため、ロリっぽい服のときもありました。ところがOLになった途端、フェミニンでコンサバ系のOLファッションに。それこそワードローブを一気に一新というほどの変化でした。

ほんの10年の間に、これだけコロコロと変わってしまうということは、「OLとはこうあるべきだ」「ママとはこうあるべきだ」という強迫観念が働いていると言えるでしょう。これは、「すべき思考」「絶対的思考」とも言い、認知の歪みの一種。本来、”絶対”というのは規則や法律くらいしかないのですが、「ダイエット中は絶対に甘いものを食べてはいけない」というように、自らに対して厳しいルールを強いてしまうのが特徴です。

また、現実とはグレーの部分が大半なのですが、曖昧さを許せずに白黒思考になってしまう人も最近は増えています。例えばファッションを変えるなら、気に入っている洋服は残しつつ新しいものをいくつか入れて、自分らしさを表現しながらコミュニティに入っていけばいいのに、絶対的思考や白黒思考によってガラッと一気に変えてしまう人がいます。

こういう人は、カテゴライズされていないと不安になってしまうのです。裏原系というカテゴリ、OLというカテゴリ、主婦というカテゴリ……。そのカテゴリから自分が外れることが許せないんですね。そのカテゴリに所属したいから、その服を着る……。ですが、このように服選びをしているときこそがより不安な気持ちを引き起こしてしまうのですね。

しっかり、今の自分が着ている服が何を意味するものなのか、どういう観点から服を選んでいるのか一度立ち止まって考えてみてください。

 

次回は、「着たい服と似合う服と落ち着く服」について解説していきたいと思います。

 

山名裕子

メンタルオフィス「やまなmental care office」代表臨床心理士。

大学にて心理療法の心得と技術を学び、2013年に臨床心理士の資格を取得する。主に認知行動療法によってカウンセリングをすすめ、心の専門家としてメディア出演をはじめ幅広く活動中。

nakayama

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