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2014.02.24 UP

編集部おすすめ

【後悔しない愛し方】人を愛するということは、シンプルでよい


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服を整理すると、ちょっとした時間旅行に出かけた気分になります。

1ページ、また1ページとアルバムをめくるように、服を取り出す。

ひとめぼれしてレジに直行した服、デート前、鏡に向かって何時間もひとりファッションショーをした服、旅行でいつもと違う空間をともにした服……。つぎつぎと出てくる洋服に、自分の中の時計の針が、過去に戻ったり、ちょっと進んだり、そしてまた戻ったり、ぐるぐる、ぐるぐるまわる。

ノスタルジックな時間が過ぎていくなか、ふと、1枚のワンピースを手にしたとき、時計の針が、音もなく、止まりました。

 

ああ、こんなのもあった

すっかり存在を忘れていたワンピースは、その昔、婚約者にいただいたもの。

当時はサイズがまったく合わず、着られなかったのですが、私はデザインが気に入ったので「ダイエットするから!」とせがみ、しぶしぶ買ってもらいました。減量をした今は、当時よりかなり体重が減っているので、さすがにもう着られるかな? と鏡の前で袖を通してみると、ぶかぶか。

ワンピースの方が大きく不格好ですが、着られるようになっていました。

でも、もう、彼に見せることはできません。

 

数年前、夏が終わろうとしていたある早朝、彼は“突然”旅立ちました。33歳でした。

お医者さんいわく、心臓の形が人と違うと。発症すると9割の人が助からない発作だと。きっと、すべて本人ですら知らぬままだったでしょう。今振り返ると、予兆とおぼしきものはありましたが、私は、気づくことができなかった。

 

“突然”のできごと……、いえ、もしかしたら、厳密には、ものごとに“突然”など存在しないのかもしれません。

時計の中でからくりがあれこれ動いて、はじめて表の針が進むように、ものごとは自分の知らないところで、確実に、何かに向かって動き続けている。そして、あるとき、表に出てくる。

それは、連続秒針のように、音もなくじわじわと1から2へと動くこともあれば、カチッと音をたて、一気に1から2へと動くこともあります。

後者が世にいう“突然”といわれているものですが、からくりが動いて、針が1から2へと進むという意味では、どちらも、そう違いはないのかもしれません……つまり、あのひのことは、かならずしも“突然”起こったことではありませんでした。

 

“突然”着られるようになったワンピースも、時計の中で動くからくりのように、自分がやはり、どこかへ向かってつねに動いていたから生まれたのだと思います。動いていた結果、痩せた、という経緯ありきの存在なのです。

今思えば、別に着られなくてもよかったんですよね。せめて、ダイエットに励む姿だけでも彼に見せられれば。ワンピースを買ってもらったうれしさだけでも伝えられれば。

きっと、それでよかったんです。

 

あのひから、人を好きになったり愛するということが、少し、変わりました。

愛するとは、時計の表面だけを見るのではなく、中のからくりもしっかりと見つめて、自分のやりたいこと、そして、相手にしてあげたいことをすぐ実行すること。いつ、どんなふうに針が1から2へと動いても、受け止められる自分でいること。後悔しない自分でいること。

人を愛するということは、シンプルに考えていいのかもしれない、と。

 

彼がくれたワンピースは、きっと、もう着る機会はないでしょう。だけど「あのひのこと」と「これからのこと」をつないでくれた。

そう気づいたとき、ワンピースとの予期せぬ再会に止まった時計の針が、また、動き出したのです。未来に向かって。

 

Photo by Pinterest

銀子

銀子

(JOPHダイエットアドバイザー/ライター/会社員)

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