ハピネス

2014.05.31 UP

「情熱では税金は支払えない」という事実の真ん中らへん

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こういう仕事をしていたら無為な1日がどうしてもできます。簡単に言うと、机に向かっても1行たりとも文章が浮かんでこない日。

印税で悠々自適という作家さんは日本では少ないと言われていますが、そういうごく少数の作家さんは、無為な1日が年間100日あっても365日を無為に送ろうともさほど生活に不自由しないでしょうし、無為な1日の終わりに激しく自己嫌悪に陥ることもないのかもしれません。

なにもしなくても毎月やってくる健康保険や税金の支払いに困ることはないでしょうから。

 

若いうちは、夢を追いかけますとか、綺麗ごとを言えますが、歳を重ねて文章を書いて暮らすという「霞を食って生きている系」の仕事をしていると、みんなどうやって高い健康保険料や税金を納めているのか、ときに不思議に思うことがあります。

実際には不思議でもなんでもなく、霞を食って暮らしている系の仕事の女性は、夜にキャバクラでバイトをしていたりします。有名な女優さんご指名のヘアメイクさんだって、その女優さんが働かないときは、メイクの指名がないので、キャバクラでバイトをして、毎月の健康保険料などを払うしかない……という現実は、取材をしているといくらでも拾うことができます。

 

一般的には、ひとはお金を持ちや有名になると夢を追わなくなると言われています。要するにハングリー精神がなくなるのだそうです。

『苦役列車』という小説を、西村賢太さんという小説家さんがお書きになっています。中卒で肉体労働をしていた氏の自伝的小説です。その小説の「解説」をなぜかあの石原慎太郎氏が書いており、今後、有名になってお金を手にした西村氏がどのような作品を発表するのか興味があると書いていました。

 

お金がない時代に、ひとは反骨精神を燃やして、貧乏でありながらも夢を追う。健康保険料も税金も滞納上等! 延滞金ウエルカム! お金を手にしたら、お金があるにもかかわらず夢を追わなくなる

あれだけ喉から手が出るほど欲しかった名誉や素晴らしい創作物も、どうでもよくなる。

 

無為な1日のなかで湯水のごとく生まれるロマンや夢はプライスレスだというひともいるけれど、要するになんのことはないゼロ円ということで、言わずもがな、生きてゆくのは、まことにシビアなことだ。

 

情熱がないと創作はできない」という事実と、「情熱では税金は支払えない」という事実の真ん中らへんがどうなっているのか、よくわからないまま歳を重ねたら不幸だということです。

 

Photo by Pinterest

ひとみ しょう

ひとみしょう

(小説家/作詞家/ANGIEシニアライター)

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