趣味

2014.06.08 UP

誰もが経験する「あのしんどさ」とベージュのワンピース

LINEで送る
Share on Facebook

57af23559ce211ba030b9cc56c02127e

ベージュの生地に花柄が裾のあたりにあるワンピースが欲しいと、ネットを見ながらつくづく思う。「ほれ、ほれ、どうだ、どうだ!」と、そのワンピースを見てもいないのに、右側の方でそのワンピースを着たモデルの女の人が鮮やかに笑っている。どうも知らないあいだに、インターネットCMに登録されたらしい。

 

う~ん、そうは言ってもね、私にはそれを着て行く場所がないのよ、どんなにやったってムダだから、と思う。

仕事を辞めてから、出て行く場所がぐっと減った。たまに出かけるとしても寺や神社とかだし、そういうところって動きと体力が勝負だから、どうしてもひらひらワンピースっていうわけにはいかない。

 

靴も合わせるならヒールの靴だし、と考えると、神社仏閣あたりにひとりで行くにはどうしてもジーンズにTシャツという格好になってしまう。

あとはたま~に飲みに行くのにもメンバーは女子ばかりだし、と考えると、ベージュのワンピースなんて代物が必要だとはどうしても思えないのだ。

 

そんな時に大島一洋著の『介護はつらいよ』を読んだ。小学館から出ている。マガジンハウスという出版社を退職し、今はフリーのライター&編集者として働いている人の本だ。父と母の介護生活を、男ひとりで七年余続けている。その間に認知症の母が亡くなり、父親は百歳を超えている。

 

「お金がないと、有料老人ホームには入居できません。ずっと自宅介護を続けなければならない。老々介護で、最後は共倒れになってしまう心配がある。あるいは独居老人になって孤独死を迎えるか」。

 

この方のご両親は蓄えがあって悲惨なことにはならないが、読んでいるうちにそれでも摩擦が起きたりする。

私たちの年代では子どもに老後を見てもらいたい、とは思っていないが、それでも老後のお金がまったくない、年金だけ、というのもやりきれないな、と思う。

 

「格差社会と言われるように、貧富の差が激しくなっている。会社の給料は下がり、リストラ、早期退職を求められ、非正規社員で穴埋めされているような状態です」。

おわりに、に書かれている文章にこの方の怒りというか社会への歪みに対する気持ちが現れている。

 

私たちにとって、介護は遠いこと、などと考えずにこの本を読んでいただきたい。

文章は小説のように読みやすいし、読むページによって新たな発見があるはずだ。この表紙とご両親の絵も、大島さんの手によるものだ。味のあるいい絵だと思う。

 

この本はひとりの人間の体験記であるが、男ひとりで看取ったというところが凄い。私たちもいつかは、介護される日が間違いなくやってくる。感じ方は人それぞれだけど、読んでみて損はしない本だ。

私なんか、入ってくるお金もどうなるかわからない身でベージュのワンピースもないだろう、と、しみじみと思い、介護する方もされる方も人ごとではないぞ、と考えた。

 

※参考  大島一洋『介護はつらいよ』(小学館)

Photo by Pinterest

かわの ももこ
LINEで送る
Share on Facebook

アプリで、ANGIEがもっと快適に。

  • お気に入り機能で便利に読める
  • プロライターによる最新情報が充実!
ページの先頭へ