ハピネス

2014.04.08 UP

疲れた私の背中を押してくれる牛丼!私を幸せにするアイテム

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食べ物で、人を泣かせることができるのだと知ったのは、オーストラリアに移住してからだった。

日本食レストランで牛丼を注文し、なにげなく友達とぺちゃくちゃおしゃべりをしながらランチが来るのを待っていた。そして、いつも通りパクッと口に運んだ途端、私は涙をこらえるのに必死になった。それは、故郷の味を懐かしく思い出させたからだった。

 

吉野家との出会い

中学生の頃、男子生徒の間で塾の帰りに、吉野家の牛丼を食べに行くのがブームになった。

彼らの話はこんなぐあいだ。

つゆだくにするとうめーよ」、「いや、生卵だろ

吉野家に行ったことのない私は、何のことだか全くわからない。男子たちがやけに大人びて見えた。

 

気になれば、行動は早いほう。さっそく便乗して、クラスメイトの女の子と、近所の吉野家に行ってみることにした。券売機でチケットを買い、私は自慢げに食堂のおばちゃんらしき人にチケットを渡す。

席について周りを見渡すと、おじさんたちはみな、ひと言も話さず無表情で食べている。それは、今まで見たことのない不思議な光景だった。

 

そして、まちに待った牛丼がやってきた。「え、これなの?」おわんはプラスチックだし、お肉は超がつくほど薄い。

おそるおそる、箸を持ち、ひと口食べてみる。「う、なんだかまずい。まずいっていうか、おいしくない。なんだこれ

私は、はじめてコーヒーを飲んだ子どものように怪訝な顔をした。

一緒にいた友達はおいしいといっていたので「おいしいね」と同意してみたけど、それはやっぱりおいしくなかったし、友達もほんとうのところはどうたったのかはわからない。

 

まずいと思っていた牛丼との再会

それから月日がたち、6年後のこと。新入社員としてはじめて入った会社のすぐ近くに吉野家があった。そこは、コンビニしかないような住宅街と隣接するエリアで、唯一のファーストフード店だった。

はじめての社会人。残業することも多くなり、仕事や対人関係の悩みも増えてきた。

仕事で帰りが遅くなったある日、どうしてもおなかがすいたので、その吉野家にひとりで入ってみることにした。お店の中は私以外は全員男性で、あのときのようにみな静かに無表情で食べている

 

やってきた牛丼は、あのときと変わらず無機質なプラスチックの入れ物にはいってきた。しかし、パクッとひと口食べてみると、あたたかい牛丼が身体中にしみた。私は無我夢中になって、牛丼をかきこんだ。

流行の音楽が店内に流れる。曲のフレーズに自分を照らし合わせてみると、なんだか切ない気持ちになる。「私、がんばってるよな。よし

それからというもの吉野家の牛丼は、仕事で疲れた私の背中を押してくれる、しあわせのアイテムとなった。

 

Photo by Pinterest

Airi

Airi

(海外在住ライター/コラムニスト)

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