ハピネス

2014.03.13 UP

春風がめくったこころのアルバム 私を幸せにするアイテム

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人は誰でも、周りに自慢するわけでもなく、心のアルバムにそっとしまってある甘くて切ない思い出がある。

冬が終わりを告げる頃、どこからか春の香りがやってくる。不思議だな、その香りはいつだって、あの時のことを思い出させる。

ファースト・ボーイフレンド

高校受験が終わり、中学の卒業式を目前にした3月のことだった。仲のいい男友達に頼み込んで、ずっと憧れていた、隣のクラスの野球部の部長を呼び出してもらった。

私はその日、朝からインターネットで占いのサイトを片っ端から見ていた。15歳の少女なりに告白の結果を予測しようと必死だった。

占いサイトの結果は全部違う。仕方ないので、いいことだけ信じることにした。

 

3時間……2時間……1時間……と刻一刻と時間は近づく。時計をみるたびに増す、胸のドキドキ感。そしてやってきた約束の時間。

待ち合わせをした中学の校門まで、自転車を走らせる。心臓は今にも飛び出しそうだし、呼吸も苦しくなってきた。心の中で「がんばれ私!」と唱えてみる。

 

約束の時間よりちょっとだけ早く、私たちは顔を合わせた。恥ずかしくて、目線のやり場にこまる。ブスッとするのも変なので、彼に精一杯の笑顔を向けた。

来てくれたことに対してお礼を言ったあと、余談をすることもないまま「好きです、付き合って下さい」と彼に告白した。

すると彼は、笑顔で「いいよ」と返事をくれた。はじめて彼氏ができた瞬間だった。

 

その場ですぐバイバイを言うのも寂しかったので、私たちは学校の周りを歩きながら、クラスメイトやこれから通う高校のことなど、たわいもない話をした。

それからというもの、学校で会うたびに手紙を交換したり、階段で落ち合い、ふたりっきりで話をした。休みの日には、始発電車で朝日を見に行たり、桜並木の中、自転車を走らせて映画を見に行った。ドキドキの連続で、ただ楽しかった。

 

しかし、それからちょうど1ヵ月たった日のこと、私たちは別れてしまった。全部、私のせいだった。

 

友達でも家族でもない彼氏という存在に対して、どう接したらいいのかわからなくなってしまった。別に嫌いになったわけじゃない。むしろ、好きだった。悩んだあげくに、別れを切り出した。「他に好きな人がいる」という嘘の理由を添えて。

なんて最低なやつだろう。自分から告白しておいて、そんな言い訳で振ってしまうなんて。

 

今考えても、なぜあんなことをしたのかわからない。そりゃあそうだ、当時の私にもわからなかったのだから。せめて私がもう少しだけ大人だったら、あんなことにはならずにすんだのかもしれない。

それから彼とは、成人式の同窓会で再会する機会があった。お互い恋人がいたけれど、ふたりで会う約束をした。別に変な意味ではなく、ただ会ってお互いのことを話したかった。

でも結局、私は最後まであの時のことを謝ることはできなかった。

 

初恋の相手というのは、自分が本当に理想とする人なのだという。大人の都合でも、世間体で選んだわけでもない、゛好き゛というピュアな気持ち。そんな初恋の相手はいくつ歳を重ねても、特別な人だ。

たとえ、相手に触れることのないまま終わってしまったとしても。

 

1年に1度だけ、どこからかやってくる「春の香り」は、つんと鼻につくように私に届く。その便りは、青春時代の甘く切ない思い出をよみがえらせてくれる、しあわせのひとときだった。

 

Photo by Pinterest

Airi

Airi

(海外在住ライター/コラムニスト)

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