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2014.05.25 UP

心躍る鉄道ファンタジーの世界!池澤夏樹作『キップをなくして』

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ある初夏の日、恵比寿駅から山手線に乗って、有楽町駅で降りるつもりだった「イタル」という男の子がいました。彼は、改札口の前でキップをなくしてしまったことに気がつきます。

 

キップをなくしたイタルは有楽町駅の隣にある、東京駅へ連れて行かれ「キップをなくしたら駅から出られない」と言われてしまいます。

東京駅には「ステーション・キッズ」と呼ばれる、キップをなくした子どもたちがたくさん暮らしている場所があり、イタルも時が来るまで、駅で暮らすように告げられたのでした。

 

今回ご紹介したい本は、池澤夏樹さん作の『キップをなくして』(角川書店/2009年)という本です。

学校も家もないけれど仲間はいるし、駅構内の食堂も売店も全てタダ、改札をくぐらなければ電車は乗り放題の、東京駅で暮らす少年の物語です。

キップをなくした子の全てが「駅の子」になるわけではありません。

さて、それでは心躍る鉄道ファンタジーの世界を、少しだけのぞいてみましょうか。

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※池澤夏樹『キップをなくして』(角川書店)2009年

キップをなくして、もらったものは?

「駅の子」たちには、仕事があります。

小さい子がランドセルを背負って、満員電車に乗ってくる。駅でちゃんと降りられるよう、ホームの端を歩いて突き飛ばされたりしないように、手を貸してあげる仕事です。

「駅の子」には特別な能力があって、本当に危険な瞬間は、時間を止めることができます。

 

また、そんな駅の仲間の中に、誰よりも長く駅の子である少女がいました。

もう二度と元の世界には戻ることが出来ない「ミンちゃん」です。

 

子どもたちの心に直接話しかけることができる不思議な「駅長さん」や、自ら定期券を捨てて駅の子になった男の子も登場します。

 

乗客たちは「駅の子」たちの存在に、なぜか誰も気がつかないのですが、彼らはたぶん、学校や塾に行くより、多くのことを学んでいたように思います。

大きい子が小さい子に優しくする、ということ。

人の命は永遠ではない、ということ。

限られた時間の中で、生きていく上で本当に大切なものをたくさん受け取っていました。

 

大人になると、あらゆることでごまかしが効いたり、見ないフリをすることができるようになるので、自ら「学ぼう」という姿勢をもたない限り、たくさんのものを受け取ることはできません。

むしろ、失うものの方が、どんどん増えていくように思います。

 

楽しいことも苦しいことも含めて、与えられた機会を隅から隅まで使って、思う存分、あなたは生きていますか?

そんな風に、駅長さんから問いかけられたような気がしました。

 

私も「駅の子」になってみたかったなあ。

夏が来る前の今の季節に、ぜひ読んで頂きたい鉄道ファンタジーです。

 

Photo by Pinterest & e-hon『キップをなくして

さゆ

さゆ

(フリーライター)

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