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2014.05.26 UP

「人間関係に疲れたな」~カンヌ的かったるさからのカタルシス~

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ちょっと古い映画ですが、カンヌ国際映画祭でパルムドール賞を取った映画のお話をします。

スコットランドからニュージーランドの孤島に、娘とともに嫁いで来たエイダ(ホリー・ハンター)は言葉が喋れない。

6歳のときから、口を聞くことをやめた、という。

だから、というのか、なぜなら、というのか、エイダにはピアノがある。ピアノは自分の語りたいこと、時には叫びたいことを代わりに話してくれる「声」のようなものだ。

 

この重たいピアノを、スコットランドからわざわざ運んできた。エイダはスチュアート(サム・ニール)の元に嫁ぐんだけど、ピアノは重たいし足場が悪くて運べない、と言う。

友人のベインズ(ハーヴィイ・カイテル)と一緒に来るんだけど、スチュアートって、悲しいことに女心をまったくわかっていない人間なのだ。それでいて、新婦のエイダに魅かれていく。

 

最初、この映画は「暗いから嫌だな」と思っていた。

だって主人公のエイダは話さないし、娘のフロラ(アンナ・ハキン)が手話で思いを伝えるなんて、暗いわ~と思っていた。

だけど観ているうちに、だんだんとエイダの持つ緊張感や深みにこちらも引き込まれていく。

ベインズに頼んで浜辺に連れて行ってもらい、幸福そうにピアノを弾くエイダ、波とたわむれながら踊るフロラ、その様子をじっと見つめるベインズ、と、ここまで揃えば、次はどうなるのかわかりそうなもんでしょう

 

エイダはベインズとスチュワートの話し合いの結果、ベインズの所にピアノ・レッスンに行くんだけど、このベインズが言う。

 

スカートを上げろ」「上着を脱げ」「裸になれ」って、そうすれば、このピアノはエイダのものになるってね。いくら喋れないからといったって、そんな要求を飲める訳はない、失礼ね! と、21世紀の私たちは言いそうだけど、この映画は19世紀のもの。エイダは、ベインズの要求に答え、いつしか魅かれていく

 

このベインズがいい! 体つきがすごい。

本当に抱かれたらどうしよう、と思えるくらい、縦も横もがっちりしている。

 

筋肉がぎゅっと詰まっている感じ。エイダのことを本当に思っていてピアノの調律はするし、ひとりでいても考えることはエイダのことばかり。

ふと見せる横顔なんか影があって、でも、そこにどうしようもない痛々しさが溢れている。最近は草食系の痩せた男が流行っているけど、ベインズの前に来たらそんな男なんて男じゃない! と思っていまうくらい本当の「男」なのです。

 

エイダとベインズの顔の大きさからして違うことと、手のひらの中に、エイダの顔が入ってしまうほど、と言えばわかるでしょうか。

 

これは海と森、風、そしてピアノの映画だと思います。

ピアノが、次々と人間関係を紡ぎだしていく。

ベインズとの愛、スチュワートとの葛藤、エイダの繋がれた欲望、フロラの裏切りと見ているうちに映画の世界に入っていく。

監督・脚本は女性で、ジェーン・カンピオン。見る価値のある映画です。

最近、人間関係に疲れたな、という人にもお勧めです。最初はかったるいな、と思っても、最後まで見てくださいね。きっと、何かが残るはずです。

 

Photo by Pinterest

かわの ももこ
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