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2014.03.12 UP

本当は社員になりたかった!今のあたしは「しがない派遣OL」

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実は気が付いているのだけれど、見たくない真実にソッと蓋をして、何でもない顔をしていたい出来事って、意外とたくさんあります。

 

私は普段、ニュースで戦争や犯罪を見ても、その後、何でもない顔をして日常に戻ります。

 

もっと身近な例で言うと、恋人が隠れて浮気していることや、私がずっとアルバイトをしており、一度も社員として働いたことがないことも(笑)。できれば目を背けたい事実です。

 

 

その事実を全て把握することが、必ずしも「しあわせ」だとは言えない時もあります。

 

今回ご紹介したい本は、ある中年女性の視点から、そんな「しあわせ」について、恐ろしいほど哀しい心理描写から考えさせられる一冊です。

 

作者はミステリーの『名探偵ポアロ』シリーズで有名なアガサ・クリスティー。

本書はミステリーではないし、何の事件も起きませんが「自分がしあわせだと信じている出来事は、果たして他人にとってもそうなのだろうか?」と自身に問いかけることを教えてくれた、ホラーよりも恐ろしい一冊です。

 

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※ アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』(早川書房)2004年

 

知らない」ことは、しあわせなのだろうか。

この物語の主人公は、優しい弁護士の夫と、良き子供たちに恵まれ、理想の家庭を築きあげたことに満足している、中年主婦の「ジョーン」です。

お嫁に行った娘の病気見舞いを終えて、バグダッドからイギリスへ帰る途中で、雨のため立ち往生し、列車が来るまで、周りに何もない宿泊施設にしばらく滞在することになります。

 

旅の途中、ジョーンは偶然会った友人との会話をきっかけに、今まで自分が誇りに思ってきた、夫婦の愛情や親子関係に疑問を持ち始めます。

夫のロドニーには、密かに愛していた友人の妻がいて、本当は弁護士になることを望まず牧場を経営したがっていたことや、また彼女が勝手に子どもたちの人生を決め続けてきたことを思い出すのです。

彼女は列車を待つたった数日間の間に、これまでずっと、自分が他人の幸せを顧みず、自己満足で行動してきたことを思い返し、今までの人生が覆されるほどのショックを味わいます。

 

ジョーンは後に、イギリスの夫の元へ戻り、これまでのこと全てを謝罪しようと決心するのですが、結局持ち前の怠惰に負けて、謝罪しようと思ったこと全てを無かったことにし、何食わぬ顔で日常に戻りました。

ジョーンの夫も、彼女が現実逃避を続けてきたため、もはや彼女の味方など誰もいないことを、彼女自身がずっと気が付かないでいることを望むのです。

 

「しあわせ」は、誰の元にも平等に訪れるのなら、一生、臭いものには蓋をして、ぬるま湯のような幸せを味わい続けることも、可能なのかもしれません。

けれどそれは、あまりにも哀しくて虚しいことではないでしょうか。

 

ジョーンの家族たちは、彼女が辛い現実に向き合わず、目をそらして生き続ける性格をわかっていながら、誰ひとりとして彼女とは真剣に向き合いませんでした。

だから、決して妻であるジョーンだけが悪いとは言えないはずです。

「自分のしあわせ」は、もしかしたら「他人にとっての不幸」になる時があるのかもしれません。

けれどまずは、相手に一歩踏み込んで、自分の主張したいことを、声を上げて伝えなくては、と思います。

たぶんそれが自分と他人、両方の「しあわせ」を考える上での、第一歩になるのではないかと思うのです。

 

Photo by Pinterest & amazon 『春にして君を離れ』

さゆ

さゆ

(フリーライター)

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